国産松茸を年に一度はご家庭で!

魚屋が抜がった話

佐兵は、藁(わら)仕事で売ってるもんだから、高畠とか泉岡にな・・・・。
注文して、毎年かます買うのだど。かますは綴じて十枚にして持っていくのだど。そして、持っていったところぁ、魚屋(いさばや)では馬鹿にする気なもんだから、こうして裏表十枚のうちのを見たど。
「佐兵、佐兵、こいつはええなだげんども、中端(なかはし)あって分んねなぁ、こりゃ」
「なぁに?」
「中端あって、上あええげんども、中が不揃いで分かんねなぁ、こんじゃ分んね」
と、返したど。そうすっど、せっかく編んで来たこいつで、酒でも飲むべど思って行ったの、飲みぼげだ。ほんでも、いっこうごしゃがねで、
「ほだか、ほんじゃ、今度ぁええの持って来っから」
と行ってしまったど。そしてこんど、しばらくもよってから、魚買いにきた。塩引きをな。
「塩引、頼まじぇ、一匹切って二十人前切っておくやい、若衆に頼まっで来たんだから・・・・」
二十切ったど。一匹の魚切ったのだから、頭の方も尻尾の方もあるわけだ。
「なんだ、こりゃ、頭の方と尻尾の方と、中の方と中端あるな、こりゃ。こんじゃおれもいらね」
と帰って来たど。魚屋(いさばや)、むかしの魚そう切らっじゃもんだから、とんな損したど。カマスどこでない、佐兵も行ってしまったから、そいつぁ売り呆(ぼ)けたど。

魚屋が抜がった話