国産松茸を年に一度はご家庭で!

彪の皮の屋根

そしてこんどは、
「おれ、とんでもない珍らしいもの見てきた」
佐兵のごんだから、また、小馬鹿にしに来た、誰もあしょらうなというたげんでも、
「とんな珍らしいもんだ、とっても見らんねもんだぜ」
「何だ?」
「あの、彪の皮で屋根葺いっだどこ見て来たぜ」
「彪の皮なて、虎の皮だの、彪の皮だって、ほがえな、熊の皮も敷かんねに、彪の皮屋根さ葺いたなんて、あんめぇちゃえ」
「どこさ?」
「宮内」
また、佐兵は人馬鹿にしてはぁ、小馬鹿にする。はつけなこと行ってらんね。なんて藁(わら)仕事しったんだって。そのうちの若い者ぁ、まず、あしょらって、
「ほんじゃ、そがな珍らしいものなら、あれぁ行ってみんべ、若しないがったら、佐兵、酒買うか」
「あまえ、ええ」
「嘘だったら、酒十五杯、佐兵が嘘こいだら十五杯、もしあったら、おらだ十五杯、ほんじゃ、酒の賭けしんべ」
そして、若衆は仕事やめて、宮内さ行ったんだど。一日がかり掛かっこではぁ。そして、六角町あたりさ行ったらば、俵が一枚屋根さ上がっていたど。そこ突(つ)ん抜けて行って、ずうっとあちこちみな見て、熊野さまあたりまで町中見たげんども、彪の皮などさっぱりない。
「んだから、彪の皮なて、ありっこないのだず」
「佐兵なて、こういうことばかり語んのだから、馬鹿にさっで来たんだから・・・。おらだ酒飲むばかりだから、ええ」
なんて、若衆は笑いわらい来たんだど。そしたら家さ来て、佐兵は待ってだ。
「なじょだった」
「なんだ佐兵、ほがえな彪の皮なんて、あんめちゃえ、どこにもないけなぁ」
「六角町にないけがぁ」
「六角町に米一俵上げっだどこあっけなぁ」
「そいつよ」
「人馬鹿にした、この野郎、ほに・・・」
「ほんじゃて、お前だ、米なじょに勘定する」
「あれぁ、米一俵、二俵って勘定する」
「米抜いでしまったもんだもの、彪(俵)の皮だべちゃ」
とうとう、文句言うたげんども、酒買わせらっで飲まっだど。

彪の皮の屋根