国産松茸を年に一度はご家庭で!

酒の只飲み

 佐兵という人は、頓智で、人の酒を年中飲んでいっから、
「今日は、あの野郎はめないで、小屋で酒飲みしろ」
というわけで、藁(わら)仕事あけに、藁しどきに佐兵さ教えねで、蔵の戸びっしり閉(た)てて、肉だの魚だの買いこんで、酒飲みしったんだど。
 ところが、佐兵は知っていたもんだから、
「野郎べら、おれどこはめない気だな、よし、はめないごんだら、またただで飲んで呉(く)れんなね。んだけど、なじょしてこの蔵の中に入ったらええがんべ」
 佐兵、味つけだど。
「やーい、こぼれっから、開けて呉(け)ろーい」
「なんだ、嘘ばっかして、開けろなて・・・」
「ほんに、よい。こぼれっから、よい。何にもなくて、一升枡さ酒買って来たんだず。こぼれっから開けて呉(け)ろ」
 野郎べらも、とんと本気にしたど。
「常にただばっかり飲んでいるから、今日は一升買って来たどこがれ」
と、蔵の戸、ガラーッと開けたど。そしたら何も買って来ねずだい。
「いやいや、寒くて涙こぼれっず」
と、蔵の中さ入って行ったど。
「いや、あそこで、夫婦喧嘩みてきた。いいや、カガが親父(おやじ)(夫)にぶんなぐらっじゃらば、カガ怒って火箸持って、親父の頭くらすけっどこ、親父は何もないもんだから、ちょっと鍋とって、こう受けたのよ」
と、鍋の蓋とって頭にかざしてから
「あらら、うまいことしったな」
と、鍋の中を見て、とうとう佐兵に飲まっだど。

酒の只飲み