国産松茸を年に一度はご家庭で!

旦那に行きたくない金

むかし、鱒(ます)だの塩引の生鱒なの珍らしくて買わんねから、魚屋(いさばや)の前通っど、こうして見る 人いっぱいいたんだど。佐兵も見っだのだど。そして佐兵はこうして見て、あまり珍らしがって見てるもんだから、その魚屋の旦那が、
「佐兵、佐兵、そがえに珍らしいか」
「珍らしい、珍らしいな」
「食ってみたくないか」
「食ってみたい」
「買わねが」
「高くて買わんねもの」
「佐兵だから、他(よ)の人でないから、五文にまけんべ」
というたど。そうすっど、喜んで五文に負けんべというもんだから、まさか銭持っていたと思わねも、ボロ衣装ばかり着て歩(ある)っからなぁ。ふろころから出したど。
「はい、五文」
と。そしたらば、魚屋、いたましくなって、
「ほんじゃ、佐兵、ちょっと待ってろ、まず」
そして、その魚さ行って、
「鱒、鱒、まず、佐兵さ買わっで行んか、行かねか。行かね、行かね?・・・・・・、行かね佐兵、悪いごんだげんど、こんどの切魚、佐兵どこさ行かねて言うぜ、仕方ないから、今度の次まで待ってで呉(く)ろはぁ、こいつぁ分んねなぁ、こりゃ」
「んだか」
と、佐兵は五文の銭持ってもどったって。
そしてこんど、すばらしい若衆の振舞いの注文受け取って持っていった。そしてどっしり揃わせて取りにいった。そして、
「その銭、なんぼだ」
「なんぼ、なんぼだ」
その銭、ゾロッと出したど。そしてその旦那が銭とる気になったど。
「旦那、ちぇっと銭に用ある。銭、銭、魚屋さ行んか、なじょだ。銭なじょだ。行かね?銭が行かねて言うぜ、銭・・・」
と、銭、ガラッと持って来て、返報がえしさったど。
まず、佐兵は狐みたいに返報がえしのしねぇことざぁないがっだど。

旦那に行きたくない金