国産松茸を年に一度はご家庭で!

酒の籠抜け

 むかし、上杉様領の頃、深沼、屋代さ行くと、御領だったから、高畠ではうんとゆるやかな御年貢だったど。米沢では少し餓死になっど、酒造んな、着るもの着んなと、うんと厳しいものであったど。
 んだから深沼の番所(ばんどこ)では、みな改めが厳しかったど。佐兵は、こっちで酒造らんねとき御領ではどんどん造っているもんだから、御領さ行って、酒持って来るずも。酒樽を持って来っど、とがめられるから、佐兵は、
「一つ、あの役人野郎べらさ、小便飲ませて呉れんべ」
 どて、酒樽さ小便を詰めて持ってきた。そうすっど、
「その樽、なえだ」
「小便だ」
「この野郎、嘘つかして、小便なんて樽さつめて背負って歩くめえちゃえ、酒だべ」
「ほんなえ、小便だ」
 役人が取っかえして、飲んでみたば、やっぱり小便だった。
「この野郎、太い野郎だ」
「ほだて、小便だっていうに聞かねで飲んだもの」
 そうすっど、次から酒を詰めて背負ってくるげんども、
「あの野郎、また小便飲ませられっど悪いから、飲むな」
 と、酒を持って来ても通したもんだど。

酒の籠抜け