国産松茸を年に一度はご家庭で!

一樽の砂糖

 ある日、行ったら砂糖樽いじり廻しったの見て、佐兵は砂糖大好きなもんだから、見っだんだど。
「なんだ、佐兵。いつまで見ていっことなぁ」
といったば、
「おれは砂糖大好きなもんだからよ」
「ほんじゃ、百匁ぐらい買って食ったらええがんべ」
「んだげんど、おれは百匁・二百匁で足んねもんだもな」
と。
「ほんじゃ、一樽食うごんだらば、食ってみろ、呉(く)れっから」
と。
「ほんじゃ、食ってええか」
と、
「ええ」
と。
 ほら、みんな、こんど街道通りも、家の人も、
「佐兵、一樽砂糖なめっどこだじがら、みんな来てみろ、まず」
と、家中みんな寄って見たど。ほしたらば、うまそうに食って、
「今日は、こんでたくさんだはぁ」
と、行くどこだど。その旦那、
「ちょっと、佐兵待て、一樽食うごとの約束だ、樽食んねもの、お前、首置いて行かんなねごでぁ首置く約束だどら・・・」
「おれぁ、今、一ぺんに食うと言わねどら、一樽食(か)れると言うたげんども、一ぺんに食うと言わねどら、んだから、明日も来て御馳走になるし、明後日(あさって)も来て御馳走になんのだ、さいなら」
と行ぐ。そうすっど、
「まずちょっと待ってろまず」
 そしてこんど、旦那、
「いやいや、おれも佐兵には参ったんだ、ほんじゃ」
と、あやまったって。

一樽の砂糖